Photo by Ripple design
2017年 神奈川県 設計:田井勝馬建築設計工房
明治28年創業、120年の歴史を持つ横浜の老舗牛鍋屋の建て替えプロジェクト。3階建ての荒井屋本店は各階に次のようなコンセプトが設けられている。
1階
創業の原点に立ち返り、庭と一体となる軒下で開放的に食事ができる「癒しの空間」
2階
古き良き時代から続く、座敷で鍋を囲む「宴の空間」
3階
海をモチーフに横浜らしさを現代的に解釈した「極みの空間」
照明デザインも各階のコンセプトに合わせて趣向を凝らした。
2層吹き抜けになっているエントランスホールに入ると、2階へ続く階段の大きな開口部に設けられた七宝模様の金属組子が迎えてくれる。金属組子の背面にある拡散フィルムを貼ったガラスを、外側から特殊な配光をもつLEDライン照明でライトアップすることで、室内から見るとガラスが光壁のように柔らかく発光し、七宝模様の金属組子のシルエットが美しく浮かび上がり、大きな行灯のようにエントランスホールを柔らかな光で包み込む。
「癒しの空間」である1Fでは牛鍋を連想させるペンダント照明と木天井を照らす間接照明のシンプルな組み合わせで、明るさを抑えたどこか懐かしさを感じるような空間となっている。
「宴の空間」である2Fは畳や木素材で構成された和の空間。それに合わせて照明は柔らかな拡散光を中心に構成されている。この空間の特徴の一つでもある和を意識した特注ペンダントには、LEDシーリングライトの光源ユニットを採用し調光調色が可能になっている。光源ユニットを覆う障子のような素材は耐熱・耐水性を考慮してワーロンシート採用するなど新しい技術を組み合わせた照明となっている。
「極みの空間」である3Fには極小のグレアレスダウンライトや、光壁を用いるなど現代的な照明手法を積極的に採用した洗練された空間となっている。光の効果によって鏡面素材で構成された空間の映り込み効果をより高めている。
また、各所に配置された荒井屋のロゴや家紋などをあしらった特注の行灯やブラケット、ペンダントも見所の一つである。